新選組の聖地・壬生寺に眠る秘宝「両界曼荼羅図」を1000年後の未来へ受け継ぐ
2026.09.09
2026.09.08

関西おでかけ手帖編集部

幕末の動乱期に新選組が駐屯地を置いた地、京都・壬生(みぶ)。当地で1000年以上の歴史を紡いできた「壬生寺」には、連日多くの参拝者が訪れます。この名刹の奥深くに、秘蔵の文化財「両界曼荼羅図(りょうかいまんだらず)」が眠っていることをご存知でしょうか。
数々の戦乱や火災を逃れ、今日まで守り伝えられてきたこの曼荼羅が、経年劣化による静かな崩壊の危機に瀕しています。
現在、この貴重な文化財を未来へ残すため、京都市へのふるさと納税を通じた修復プロジェクトが始動しています。本記事では、壬生寺の貫主(かんす)・松浦俊昭様へのインタビューを交え、文化財保護の意義やプロジェクト詳細についてお伝えします。
新選組ゆかりの地「壬生寺」の見どころと歴史
京都の中心地からほど近く、中京区の住宅地内に位置する壬生寺は、新選組隊士の墓所を擁する歴史の舞台として知られています。
しかし、その一面は、1000年以上続く深い信仰の歩みの一部に過ぎません。まずは、多くの人々が訪れる壬生寺の歴史を紐解いていきましょう。
見どころ1.新選組との関係性
幕末、壬生寺の境内は新選組の兵法調練場として使われていました。境内東側、阿弥陀堂そばにある「壬生塚」には、局長・近藤勇と副長・土方歳三の胸像が並び、芹沢鴨ら隊士たちの墓所があります。毎年7月16日には「新選組隊士等慰霊供養祭」が行われ、幕末を駆け抜けた志士たちを偲ぶファンが全国から手を合わせに訪れます。
阿弥陀堂の授与所では、新選組の隊服に用いられたダンダラ模様や隊士の家紋、愛刀などがデザインされた限定の御朱印帳「誠帖」を受けることができ、ファンにとって大切な品となっています。
また、阿弥陀堂地下にある「壬生寺歴史資料室」保存の資料には、境内で大砲の訓練をするなど血気盛んな新選組に対し、「迷惑をこうむった」とありのままの記録が残されています。一方で、一番隊組長の沖田総司が境内で近所の子どもたちを集めて遊んでいたという、ほのぼのとした逸話も語り継がれています。
幕末の動乱のただ中に置かれながらも、壬生寺はそのすべてを包み込み、志士たちを偲ぶ場として、今も優しく人々を迎え入れています。
見どころ2.歴史ある「壬生狂言」と「節分会」

出典:壬生寺
お寺の顔となる行事の一つが、重要無形民俗文化財に指定されている「壬生狂言」です。正式には「壬生大念佛狂言」と言い、「壬生さんのカンデンデン」という愛称で古くから京の人々に親しまれてきました。
「壬生狂言」は、今から700年前の鎌倉時代、壬生寺を興隆した円覚上人が創始したものです。無言劇でありながらユーモアと教訓に満ちた狂言は、今も多くの人々の心を和ませています。
また、京都の冬の風物詩である壬生寺の「節分会」は、平安時代に白河天皇の発願によって始まりました。壬生寺が京都御所から見て南西の「裏鬼門」にあたることから、三日間にわたり古式による節分厄除け大法要が行われます。900年あまりを経た今も変わらず、人々の無病息災を祈る場として賑わいを見せています。
壬生寺秘蔵の文化財「両界曼荼羅図」の静かな危機
歴史に名を刻み、地域とのつながりも深い壬生寺。その奥には、普段は公開されていない文化財が存在します。それが今回の修復プロジェクトの対象である「両界曼荼羅図」です。
壬生寺に伝わる秘蔵の文化財「両界曼荼羅図」とは
壬生寺は、正暦2年(991年)に天台密教の拠点の一つである園城寺(三井寺)の僧・快賢によって創建されました。平安当時の密教は、宗教的な祈りに留まらず、国家の安寧を図る「鎮護国家の要」として重用されており、裏鬼門の魔を祓うために密教の修法が必要とされていました。
その後、壬生寺は奈良の唐招提寺を総本山とする「律宗」の寺院となりますが、密教の秘宝である曼荼羅は大切に受け継がれてきました。そこには、律宗ならではの深い教えが関係しています。
律宗の教えと曼荼羅の関係について、壬生寺の貫主・松浦俊昭様にお話を伺いました。
「律宗の修行には『八宗兼学』といって、他宗の教えも幅広く学ぶという精神があります。古くは、真言宗の作法を学ぶために護摩を焚き、その際のご本尊として、この両界曼荼羅図が掛けられていました」
曼荼羅は、寺院の装飾品ではなく、法具の一つです。それは、言葉では表すことのできない宇宙の真理を描き出したもの。慈悲を表す「胎蔵界」と、智恵を表す「金剛界」、二幅の曼荼羅で完全な宇宙を表します。
密教の最高峰の儀式において、曼荼羅は僧侶が仏と一体化するための入り口であり、欠かすことのできない法具としての役割を持っているのです。
猛火を逃れた秘宝が今、経年劣化で危機に瀕している
壬生寺の長い歴史は、決して平坦なものではありませんでした。鎌倉時代に伽藍を焼失し、そして昭和37年(1962年)にも火災によって本堂が全焼。平安時代から伝わるご本尊・地蔵菩薩などを失うという深い悲しみを経験しています。
しかし、宝蔵に納められていた両界曼荼羅図は、幾多の猛火や戦乱を免れました。先人たちが懸命に守り抜いてきた、貴重な文化財なのです。
ところが今、数百年の時を経て、曼荼羅は静かな崩壊の危機に直面しています。
彩色を施していた顔料が剥落し、本紙と軸の木が離れ、吊るして展示することすら困難な状態です。約10年前に「京都文化博物館」で展示された際も、保護のために斜めの台に寝かせる形でしか公開できませんでした。このままでは、過去から紡がれてきた宝が消滅してしまう可能性があります。
【貫主インタビュー】1000年先へ「宇宙」を繋ぐ。文化財を守ることの意義
なぜ今、両界曼荼羅図の修復プロジェクトを始動させたのか。松浦貫主に、文化財を守り継ぐことの意義を伺いました。
「次へ繋ぐ」こと。それが歴史を預かる私たちの使命
——長い歴史を持つ壬生寺において、今このタイミングで曼荼羅を修復し、未来へ残していくことには、どのような意味があるのでしょうか。
松浦貫主(以下、敬称略):私たちには、基本的に歴史を途絶えさせるという考えはありません。お寺を任されている者の使命は、先人たちが繋いできたものを次へ受け継ぐことです。
今、両界曼荼羅図は傷んで使えない状態にあります。そのため、長らく代わりの御軸を使って護摩を焚き、ご祈祷を続けてきました。しかし、こうしてご縁をいただいて修復できるのであれば、本来の法具としての使い方に戻し、法要の中で使っていきたいと考えています。曼荼羅は棚の奥に大切にしまっておく美術品ではなく、私たちが祈りを捧げるための生きた法具だからです。
ただ、修復できたからといって、これまで繋いできた現在の祈りの作法をすべてやめてしまうのも違うと思っています。曼荼羅を使えず、代わりの御軸で祈ってきた時代もまた、お寺の大切な歴史の一部です。
今まで繋いできた方法を大切にしながら、修復された曼荼羅も生かし、未来の僧たちが祈りを捧げられるようにする。修復の一番の目的は、歴史を次へ繋ぐことにあります。
自分と繋がっている曼荼羅が「心のよりどころ」に
——今回、ふるさと納税という形で広く支援を募り、曼荼羅の裏に支援者様のお名前を残すという取り組みを始められました。この支援の形には、どのようなメッセージが込められているのでしょうか。
松浦:お寺の存在意義として大切にしているのは、仏様とのご縁を結ぶ場であることです。当寺が大切にしている言葉に、「山川異域 風月同天」があります。これは「住む場所(山川)が違っても、見上げれば同じ天、同じ月(風月)を見ている。だからともに仏縁を結びましょう」といった意味です。
先日、東日本大震災犠牲者の慰霊のため、気仙沼で洋上法要を行いました。参加された地元の方が「長年、海に眠る家族への心のつかえがあったけれど、法要ができたことで、ようやくそのつかえが取れました」と涙を流しておられたのです。
その時、「仏教は亡くなった方のためだけでなく、今を生きている人のための教えなのだ」とあらためて感じました。現代は個人主義が進み、孤独を感じる人が多い時代です。誰にも相談できず、一人で抱え込んでしまう。だからこそ、「心のよりどころ」が必要です。
全国どこにお住まいでも、修復への支援を通じて曼荼羅の裏にご自身の名前が残る。自分が関わったものが京都の壬生寺にある。辛いことがあったとき、「壬生寺に行けば自分と繋がっている曼荼羅がある」と思えること。それが、その方にとっての新たな心のよりどころになればと願っています。
\プロジェクト詳細はこちら!/
壬生寺秘蔵「両界曼荼羅図」修復プロジェクトでふるさと納税をする
文化財を未来へ手渡す、修理の匠が挑む3年間の修復プロジェクト
「関西おでかけ納税プレミアム」が提供する本プロジェクトへの寄附は、壬生寺や修復に関わる方たちが紡いできた数百年の歴史の歩みに、深く関わるための仕組みです。お寄せいただいた支援は、具体的にどのような工程を経て文化財の命を救うのでしょうか。
壬生寺秘蔵「両界曼荼羅図」修復プロジェクトで、後世に寄附者の名前を残す
曼荼羅の修復を手掛けるのは、国宝や重要文化財の修理で数多くの実績を持つ専門工房「岡墨光堂」です。今回の修復は、往時の姿への復元を目指し、3年の歳月をかけて行われます。同工房の代表・岡岩太郎様に、そのプロセスを伺いました。
1年目:解体と、細心の注意を払う「裏打紙の除去」
まずは修理前の現状を静止画像と文書で精密に記録したあと、掛け軸を解体し、浄化水による汚れの除去と、膠(にかわ)水溶液を用いた彩色層の強化を行います。
岡様は「技術的に最も神経を使うのは、古い裏打紙(裏に貼られた和紙)を剥がす作業です」と語ります。絹に描かれた絵には裏面からも彩色が施されており、この色を傷めることなく裏紙だけをゆっくりと除去していくという、熟練の技が求められる工程です。

出典:岡墨光堂(上記は修復のイメージです。実際の作業とは異なる場合があります)
2年目:調和をもたらす「電子線劣化絹」と「3種の和紙」
欠損している箇所には、オリジナルに近い組織の絹を補填します。この時、数百年の時を経た曼荼羅の風合いに調和させるため、人工的に経年変化を持たせた「電子線劣化絹」を用いるという細やかな配慮がなされます。
さらに、新しく裏打ちをする和紙にも匠の技が光ります。「岐阜県の『薄美濃紙』、奈良県の『美栖紙』と『宇陀紙』という性質の異なる3種類の和紙を絶妙に組み合わせることで、しなやかに巻き解きが可能な掛け軸となるのです」と岡様。職人がその都度、小麦澱粉を加熱して作った糊を用い、調整を行います。
3年目:西陣織の裂地による表装と、未来へのメッセージ
新調する表装の裂地は、西陣にて手機で織られたものをあしらいます。手作りならではの文様の柔らかさが、曼荼羅本体を美しく引き立てるのです。復元的な彩色は行わず、周囲と調和させるための彩色のみを施し、ついに完成を迎えます。
岡様は、文化財修復の哲学についてこう語ります。
「文化財の修理は、一般的に50年から100年に一回の周期で行うのが理想とされています。私たちが目指すのは、新品のように綺麗にすることではなく、いかに現状のオリジナルを安全に残すかです。次の修理を担う未来の修理技術者が、私たちがどう直したかを読み解けるように、技術でメッセージを伝えることが大切なのです。修理とは、一回限りの刹那的なものではなく、貴重な文化財を未来へ手渡すためのメッセージだと考えています」
非公開拝観や修復現場見学、そして「お名前の永代銘記」
時間を惜しまない真摯な手仕事が注がれる本プロジェクト。ご寄附をいただいた方には、返礼品として文化財や歴史と深く関わるための特別な体験が用意されています。
お名前の永代銘記
修復される曼荼羅に、お名前を墨書した紙が添付されます。ご寄附をいただいた方の生きた証として、壬生寺や曼荼羅の歴史とともに未来へ残ります。
修復現場の特別見学
岡墨光堂の工房にて、普段は公開されていない修復現場を特別に見学できます。ご寄附による支援がどのように形になっていくかを、実際に見て確かめることができます。
完成後の特別法要へのご参列
3年後、修復を終えた曼荼羅は、まず壬生寺で展示される予定です。祈りの法具として再び息を吹き返す歴史的な法要に、特別な招待客として立ち会うことができます。
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壬生寺へのアクセス・拝観情報
| 住所 | 〒604-8821 京都府京都市中京区壬生梛ノ宮町31(正門:坊城通り四条下る) |
|---|---|
| 電話番号 | 075-841-3381 |
| 拝観時間 | 9:00~17:00(壬生塚・歴史資料室は9:00~16:00) |
| 拝観料 | 境内:無料
壬生塚・歴史資料室:大人 400円、小学生・中学生・高校生 200円 |
| アクセス | 【電車】
阪急京都線「大宮」駅、嵐電(京福)「四条大宮」駅より徒歩約10分 【バス】 京都市バス「壬生寺道」バス停から徒歩約3分 |
| 駐車場 | 近隣にコインパーキングあり
※駐車場が少ないため、なるべく車でのご来寺はご遠慮ください |
| 公式HP | 壬生寺 |
1000年先の未来へ、あなたはどんな証を残しますか?
新選組の志士たちを見守り、京都の人々の祈りを受けとめてきた壬生寺。幾多の危難を逃れ、今日まで守り伝えられてきた両界曼荼羅図は、修復が終われば再び、1000年先の未来へと受け継がれていきます。
しかし、それは今を生きる私たちが「未来へ受け継ぐ」という思いを共有し、行動に移したときに初めて叶うものです。
「山川異域 風月同天」——どこにいても、同じ空の下で繋がっている。
貫主や職人たちが紡ぐ、この歩みに加わることで、壬生寺に生きた証を残し、心のよりどころとしてみませんか。
プロジェクトの詳細やご寄附のお申し込みは、「関西おでかけ納税プレミアム」特設ページをご覧ください。
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